世界樹の迷宮:タイトル未定

世界樹の迷宮SSです。導入部。タイトル未定。完成までには決めます。ちなみにネタバレなんだからねっ!

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延々と歩き続けて、どれほど時が経ったろう。
もはや樹の隙間から我々を照らしていた日射しはもう此処には届かない。
迷宮の地下第五階。ここは光が闇へと転じる領域。私たちは薄闇の中を掻き分けるように進んでいた。


【1】
(なんかおっかしいんだよなァ。)と、ショアは心の中で呟いた。
今しがた降りてきた階段を振り返り、彼女は思う。
この迷宮はどのようにしてできたのだろうという疑問は、この迷宮に挑み始めたときから胸に抱いていた。
迷宮の上下層を移動する階段は、草木が整えられたかのように積み重なり規則的な段差ができていて、しっかりと階段の様を成している。
それは先に迷宮に挑んだ先達のお陰なのかもしれないが、それにしては定期的に整備されているわけでもないのに「綺麗すぎる」のだ。
まるで森が、人を受け入れる…いや、誘い入れるために、自らの意志でその姿を保ち続けているかのように。
もしかしたら、我々は森という大きな命の、腹の中にいるのではないか…とまで思い、周囲の枝葉が手を伸ばしてくるかのような錯覚に陥った。
その時、彼女の背後から声がかかった。思わず、びくりと身震いさせてしまう。


「どうしたの?みんな先いっちゃったよ?」
思いに耽っていたショアに、マチが駆け寄る。大きな声は出さない。声に気づいた怪物どもが寄ってくるからだ。
見れば、パーティの皆は、ずいぶん先に行ってしまっている。
「ん、ああ…、ちょっと考えごとしてた。ゴメン」
「大丈夫?疲れてるの?回復しとこうか?」
顔色が悪そうに見えたのか、マチが心配そうに私の顔を見上げる。マチは歳のわりに背が低いので、どうしても私を見上げる形になってしまうのだった。
「大丈夫だよ。ホントに」
心配そうな表情を崩さないマチに微笑みをかけたが、訝しげな彼女の表情は変わらなかった。自分の心の中の不安を見透かされているのか?
「平気だって!ほらっ!急ごっ!」
ショアは場の空気を切り替えるように強引にマチの手を取り、駆けはじめる。
「あっ!あああっ〜」
歩幅の合わないマチは引っ張られるように後をついてゆくしかない。
二人はぎくしゃくした足取りで仲間の元へと向かった。


走りながら、肩に掛けていたロングボウを持ち直すショア。
自分の頼るべき得物であるそれを見つめることで、先ほどの思いを振り払うことができればと思ったのだ。
(考えすぎ…だよね…きっと)
彼女は一瞬だけ振り返る。さっきまで、自分が立っていた場所を。
だがもはやそこは深い闇がただ広がるのみであった。

ー続くー