スプリングマン09MIX「この街の冬」

感想が長くなりすぎて、今日中に書ききれなかったのでひとことだけいいたい。
明日の千秋楽に見に行けるならば見に行った方がいい。以上。
当日券が若干のこっているらしいので。ダメもとでもいいから。
俺も開演には若干遅れてしまうが、もう一回見に行くかもしれない。


素晴らしい。
舞台というのは初体験でしたが、初体験でこんな当たり引いていいのかというくらいに大満足。
正直「若林直美さまの演技が見られればいいなー」程度で行きましたが、いやいやそんな、
全キャスト良い演技してますし、なにより脚本・演出が素晴らしい。


以下ネタバレ。

いやーとても良かったですね。
物語を通して、それぞれの立ち位置はあまり変わらないんですけど、心の持ちようがみんな変わっていく、
そういうささやかだけど、細かい機微の変化を見せてくれました。


この作品は、本質は変わらないんだけど、意味が反転する瞬間があるんです。
その極地として、劇中歌の「Blue Spring 〜青春なんて日があったよね〜」の詩をですね、
アガタさん(一発屋の小説家)が「『ここ』ってどこよ?ぼんやりしてる。」みたいに指摘する所があって、
でも、最後にマチコが「『ここ』がいいんです…」の台詞で、同じ「ここ」という言葉なんだけど、最後の方は明確に何処なのかが定義されて、
マチコが嫌いだった、この家を、この街を肯定できるようになったって瞬間で。ちょっと涙とまんなかったっす。
ここのカタルシスはちょっと手を押さえて嗚咽を抑えましたね。
だって押さえねーと台詞きこえないじゃん。アンビバレンツだよね。感情の赴くままに泣きたいけど、物語は未だ続いているという。

歌も、良かったですね。最初、ドラムもアンプもなしに歌い始めた時は、これはデビューとか無理だろー(笑)
とか思わせるんですけど、フユミ宛てのお母さんの手紙を読んだあとに、フユミがアカペラで歌い始めたときはもう
グズグズ泣いてましたなー。会場内もみんな黙って泣いてた人もいましたね。


も、でてくる登場人物みんな好きになっちゃってね。
ポスターとか入場前は別にいらねっかとか思ってたんですけど、終わった後には「こいつらの集合写真いいじゃん」とか
思って、思わずポスターは買っちゃいました。脚本の澁谷さんにもサインもらいましたが。
パンフも欲しかったんですが。17日は残部7部と言うことで、ジャンケンに負けて手に入れられず。
見たいな〜・


今回の登場人物はみんな好きなんだけど、うん、みんな好きだなー(笑)
中でもコミックリリーフ的なチッチ、意外といいとこ見せてくれた小山が特にお気に入りですね〜。
でも五十嵐さんもかっこいいし、ノリちゃんも独特の空気まとっててイイし…甲乙付けがたい(笑)


■ハルオ…「修理と同じだよ…壊れたもの見ると、直したくなるんだ…」
うん、この台詞が春男の全部をもってった。
いままでの彼の行動に対する、俺の中でのわりきれなさや、わだかまりがすべて氷解する素晴らしい台詞です。
この瞬間、ハルオの存在が物語のギアにガッチリはまった感じがしたんですよね。
この台詞があっただけで、見に来た意味がありました。
ハルオは一貫してかわらなかった登場人物だったかな。
彼のお人好しすぎる不安定な生き方だけど、だからこそ、周囲に変化を与えたというか。
あそこまで、馬鹿なくらいにお人好しなんだけど、こっちの認識も最初は「馬鹿だなこいつ」、から、「こういうヤツがいるのも、いいか」みたいなね。
「直して見せますよ。それが僕の仕事ですから…。なんちゃって。」には、おめー上手いこと言ったつもりだろう(笑)とか微笑ましく締めていただきました(笑)



■フユミ…「たまに…かえってきてもいいかな…?」
フユミも変わってくんですよね。
最初はデビューに向けて必死なんだけど、ベースが抜けて、妹の資金的協力も得られず、ついにはデビューすらできなくなってしまう。
だからお金を出すってマチコが言った時も「なんで?」って言って、お金を出そうとするマチコに問いただすし。
この想いが反転する瞬間とかうまいんですよねー。ホント上手くできた脚本です。
「一所懸命なだけじゃダメなんだよ!」って、自分たちの、自分のふがいなさを認識するところとか。
「タイガーウォール集合!」も3回くらいあったけど、全部意味合い違って面白かったなー。
演技もとてもすばらしかった。自然さというか、台詞の間が完璧。アドリブとかあんのかな。
結構緻密に作られてたホンじゃないかとおもってるんだけど。
ほぼ二時間出ずっぱりで、全てできるのとか舞台が初体験のもあってびっくりでした。
役者さんってすげーと再認識しました。これからも、ファンでいさせてください。


■マチコ…「ここが…いいんです…」
最初は、フユミの音楽を否定してたんだけど、自分の人生と引き替えに好き勝手やってきた姉の夢が潰えるとき、「勝手にやめないでよ!」の台詞とかもう泣けるわ。
フユミは同じ音楽をやるっていうところでは変わらないんだけど、完全ではないけど妹に許しをもらったわけで。
「私とお母さんを犠牲にしてきたんだから、売れなくても一生音楽やりなよ!」とかもー泣けるっつの。
ハロゲンヒーターを点けようとするところの、半泣きの声の演技はすごかったなー。泣き笑いぽい声とか反則やわあ。感情移入の度合いが半端ない。「うん…」の一言にいろんな感情ふくめてて。
フユミのカラッとした辛気くさい雰囲気を吹き飛ばそうとする声との対比もあって、あの姉妹の最後のシーンは会場内もグズグズ泣いてましたね。
俺もだけど。


■小山…「今度、電器の修理、教えてくださいよ…」
ダルそーな不真面目な電器店社員かとおもってたんすよ。お客さんの家の中で煙草吸い始めるしね。
でも、ハルオが「壊れた物みると直したくなる」って言ったときに、わかっちゃったんだろうね。
「じゃあ俺も手伝いますよ」とか言い始めたときは悶えた!
「ちょっと、格好良かったッスよ」とかね、ああもう、こいついいとこあんじゃん!みたいなね。
でも結構イイヤツでもうこんちくしょうーこういうの好きなんだわーという。
「電器に興味なかったら、電器屋になってませんよ」とかもー泣くっつの。


■五十嵐…「良かったな。いい妹さんがいて…。」
最初は胡散臭い音楽プロデューサーかと思っていたんです。
口調とか結構調子良さげに軽めだし。タイガーウォールのこと騙して金巻き上げようとしてるんじゃないかって。
でも既にタイガーウォールにお金貸してるって話が出始めた頃から「あれ?」って思って、
思い返してみると、適当に応対するノリちゃんに「いま、はいはいって言った?」とか「遅刻はいかんよ」とかまともなことしか
言ってないんですよね。
んで(この人、ちゃんとしてる…)って思うようになって、スズハル加入してから最後に歌を聴いたあとに、
しっかりダメ出しする姿見て、(あ、疑っててすんません…)って思いましたね。先入観って怖いなあ(笑)
とてもかっこいい役者さんでしたねー。最初は纏っていた空気からうさんくさい2枚目半な感じでしたが、
最後の方ではもうかっこよくて、ゾクゾクきていました。


■アガタ…「ゼロから何かを作るのって、大変よね。」
マチコの隣人。物語を引いてみる立場。
立場的に色んな人にフラットなツッコミを入れられる人でした。
タイガーウォールの駄目さ加減を冷静に「ロックじゃないでしょ」とかスパッとダメだしするし。
それも後に効いてくるしねー。ほんとうまいわ。
あと、マチコの「ええ、一発屋ですけど」には吹いた(笑)
ノートを捨てる下りのやりとりは吹いたわ(笑)
「今、なんか書きたい気分なの」はホントに感じたわ。すげー刺激もらった。


■ノリちゃん…「中華は奥が深いんです…」
ノリちゃんかわいいです(笑)
タイガーウォール内では結構流されキャラなんですけどね。中華やるからバンドやめる!といったけど、
うやむやのまま、バンド続けて、最後には「やっぱりギター楽しいです!」って
ノリちゃんはなんというか、自然な演技でわらかしてもらいました。うまいっすね…。
なんというか上手く表現できない凄さがあります。


■チッチ…「フェラーリのこともあるしな…」
いやーほんとオイシイキャラだったわ(笑)今回の物語のコミックリリーフですね。
あんま強気ではなく、半端な意志ので、ツッコミキャラとしてすげーよかった。
タイガーウォールがさだまさしと比較されて「ハードルたけーな!」は面白かった(笑)
「バイトこええ」とかもーほんと面白い(笑)
でも最後まで、タイガーウォール辞めるって言わなかったのチッチだけなんだよね。
「やろうぜ」って「音楽なくしたらどうしていいかわかんねぇよ」とかさ。
彼もタイガーウォールの一員としてちゃんとそこに在りました。



大変素晴らしい舞台でした。このキャスト、脚本で別の舞台があったなら見に行きたいですね。
脚本が澁谷さんなら、次回の公演も行きたいと思います。


そのまえに今回の公演のDVDとか出ませんかねえ…。多くの人に見て貰いたい作品だなあ。
何より俺がもっかいみたいんだよ!(笑)


■関連リンク
公演終了!!:澁谷光平
この街の冬:井手昭仁
「この街の冬」閉幕:小澤雄志


■公演データ
1月17日 会場 18:30 /開演 19:00 公演時間 約1時間50分


脚本・演出 澁谷光平


出演
武藤啓太:ハルオ
若林直美:フユミ
朝倉亮子:マチコ
井手昭仁:小山
小澤雄志:五十嵐
谷口絵美(カカフカカ企画):アガタ
仁後亜由美:ノリちゃん
苗村大祐(メガロザ):チッチ

at 下北沢OFFOFFシアターhttp://www.honda-geki.com/offoff.html

STAFF
舞台監督:ネオ・サンシャイン
音響:竹田雄(ThreeQuarter)
照明:たなか一絵
舞台美術:西川公絵
メイク:太田哲郎
宣伝美術:小飼慎一
宣伝写真:谷口貴亮
映像:河嶋浩介
音楽:takuriano
パンフレット制作:小谷昌嗣
劇中歌:「Blue Spring 〜青春なんて日があったよね〜」
作詞 若林直美&yura 作曲 えで〜(OZ)
場内アナウンス:岩合智史
制作:烏山智江・中塩屋祐介
企画・製作:スプリングマ